| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-006 (Poster presentation)

全種をカバーする保護区のサイズと、多種の分布相関

*竹中明夫,石濱史子(国立環境研)

日本では、環境省が公開している自然環境基礎調査の結果など、二次メッシュのセル(約10キロ四方)単位で多くの生物の分布データが整理されている。このうち、ほぼ全国をカバーし、分類群を構成する種のかなりの部分のデータが揃っている高次分類群(哺乳類、鳥類、両生類、チョウ、シダ植物、固有種子植物など)を対象に選び、それぞれ全種が最低1回はどこかのセルに含まれるような二次メッシュのセルのセットを求めた。たとえば2400種からなる固有種子植物は370セル、チョウ273種は28セル、両生類64種は19セルのセルで全種をカバーすることができた。

次に、各種が分布するセルの数は変えずに分布場所をランダムに再配置した人工データを生成した。この場合、極端に多種ないし少数の種が分布するサイトがなくなる。このデータを対象に保護区の選択を行ったところ、生成される保護区のサイズは、元データから元めた場合のおおよそ1.6倍(両生類など)から3倍余り(トンボなど)と大きくなった。これは、実際の分布では多種が集中して分布するセルがあることにより小面積で効率よくカバーできるためと考えられる。

さらに、各種の分布セル数も、各セルに分布する種の数も変えずに、種の分布をかきまぜて種間の分布相関を取り除いた人工データを生成した。このデータで全種をカバーする保護区を選択したところ、実際の分布データで求めた保護区とほぼ変わらない面積で済む場合(淡水魚など)から約2倍の面積が必要な場合(シダなど)まであった。実際の分布データから求めた保護区がコンパクトになっている場合は、種間の相関関係があることによるものと考えられる。たとえば、少数の種が分布するサイトの構成種が、多種が分布するサイト構成種のサブセットであれば(すなわち nest 構造があれば)、こうしたパターンが観察されるはずである。


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