| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-022 (Poster presentation)

河川性魚類の種多様性と淵での餌消費率の関係

*丸山敦, 野田日奈子, 黒田友美 (龍谷大・理工)

多様性と生態系機能の関係は、生物多様性保全の意義に関わる重要事項である。多様性と機能に正の関係がみられるのは、多くの種によるニッチ利用で空きニッチが減り、資源活用率が高まるためと考えられる。ただし、各種のニッチは共存種との関係で柔軟にシフトするため、単純な一般化は難しい。本研究では、研究例の少ない河川中流域の淵における魚類を対象に、①魚種の増加によって空間ニッチの活用率が上がる、②空間ニッチの活用率の増加で資源である流下餌の利用効率が上がる(餌の流出率が減り、魚の成長率が増加)、という2つの作業仮説を検証した。

検証は淵を模した流水水槽で20日間行った。河川中流の淵で共存しうる6魚種を選び、1〜4、6種の5段階を設定した。各水槽の総個体数は12として、種ごとの個体数が均等になるように混合飼育した。与えた餌のうち魚が食べずに流下した餌の割合を測定して流出率を求めた。水槽を鉛直方向5セル、流程方向 12セルに区分けし、各魚種が利用する空間を記録し、こみあい度と種間の重複度を求めた。実験前後に体重を測り成長率を求めた。

単回帰の結果、種数とこみあい度に有意な関係はみられなかったが、「こみあい度」と流出率には正の関係がみられ、こみあい度と成長率には負の関係がみられた。GLM分析では、成長率に影響する変数は、こみあい度、実験前の体重、種数、魚種であった。種数は成長率をむしろ減少させた。種間の空間利用の重複が少ない水槽で、種数が増加すると成長率が高まる傾向が強くみられた。

種多様性が空間活用範囲に影響しなかったのは、魚類の行動が可塑的で、共存種数に応じて利用可能な最大の空間を利用したためと思われる。空間の活用範囲が増加すると、魚が取りこぼす餌の量は減少し、魚の成長率は増加したことから、空間ニッチが餌の利用効率に影響することは示された。


日本生態学会