| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-028 (Poster presentation)

土地利用における年推移変化行列の導出の実際

*長谷川成明(北大・低温研), 高田壮則(北大・地球環境), Jan Bogaert(Univ. Liege)

土地利用が時間経過と共にどのように変化しているかを調査する際に、一定の時間間隔をおいて撮影された衛星画像などを比較し、これらの間で推移変化行列を推定する手法が多く用いられる。この手法は客観的に土地利用の変化を示すことができる点で有用であるが、例えば異なる場所間の土地利用の変化を比較する際に、それらの場所間で撮影間隔が異なっている場合は直接的な比較ができない手法上の限界があった。

Takada et al.(2010)は行列の累乗根を求めて単年度の推移変化行列(以下、年推移変化行列と呼ぶ)を導出する方法を提案し、撮影間隔の異なる推移変化行列であっても比較を可能にした。しかしながら、行列の累乗根には土地利用において不適当な負の値を要素にもつ行列や、虚数の値を要素にもつ行列が含まれてしまう。そのため、全ての要素が実数かつ正の年推移変化行列(以下、正の行列と呼ぶ)、あるいは実数だが一部に小さな負の要素をもつ年推移変化行列(以下、小負の行列と呼ぶ)が必ず得られるとは限らない。

本研究では土地利用の変化について扱った過去の研究43編から83個の推移変化行列を得て、これらについてTakada et al.(2010)の方法で年推移変化行列を算出した。その結果、74の推移行列で正あるいは小負の年推移変化行列が得られた。対象となった推移変化行列のうち59個については面積データも得られたため、推定精度について、既存の年推移変化行列導出法であるUrban and Wallin(2002)の手法と比較した。その結果、50の行列でより精度の高い年推移変化行列を得ることができた。これらの結果はTakada et al.(2010)の手法が土地利用における年推移変化行列の導出において優れた手法であることを示している。


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