| 要旨トップ | 目次 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
一般講演(ポスター発表) PB2-031 (Poster presentation)
ミツバチは高度な社会性を持っており、超個体と呼ばれるような分業体制を
構築することで、大規模なコロニーを長期にわたって維持することができる。
ミツバチがコロニーを安定な状態に維持するためには、採餌、造巣、繁殖、
巣内環境調節などの一連の社会性行動をどのように行っているかを解析する
必要がある。これまでに、ミツバチの行動モデルにおける研究では、エネル
ギー収支や個体数の変動を中心とした研究などが行われてきた。これらは、
コロニー内の個体数やエネルギーの終始を数値としてのみ取り扱っているが、
位置や距離と行った空間の効果を焦点としてはあまり取り扱ってきていない。
しかしながら、ミツバチは女王蜂が産卵行動の際にはコロニー中心に生む
ことが多いことや、育児蜂がコロニー入口付近で餌を受け渡すなど、コロニ
ー内の空間の効果が影響を及ぼしている可能性が観察されている。本研究
では、この空間の効果に着目して、格子確率モデルを発展させた個体ベース
モデルを構築することによって、ミツバチのコロニー維持を解析することにした。
モデルでは、女王の産卵を行い、巣房に卵を設置し、その卵が、幼虫、蛹、
羽化し、育児蜂へと成長するか、自然死、もしくは、給餌がなかった場合は
死亡するとした。育児蜂は、幼虫の給餌と死亡による死骸を掃除することとし、
一定期間後、採餌蜂となるようにした。こうして、構築したモデルをシミュレーシ
ョンした結果、個体数の変動を解析したところ、女王の産卵に空間の効果を
入れた場合は、コロニーの維持が可能であるが、空間の効果がない場合は、
難しいということが分かった。