| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-032 (Poster presentation)

「その数理モデルでは進化的分岐が起こり得るか?」を判定する一般的条件

*伊藤洋,佐々木顕(総研大・先導研)

適応進化を解析するためのAdaptive Dynamics理論では、生態的相互作用による選択圧が集団の進化的な分岐を引き起こす現象を、進化的分岐(evolutionary branching)と呼ぶ。数理モデルにおいて無生生殖集団の進化的分岐が生じるための条件は、進化的分岐条件と呼ばれる。有性生殖集団についても、この条件は同所的種分化や側所的種分化の必要条件を与えるだろう。すなわち、この条件が満たされており且つ同類交配が進化し得る場合には、同所的種分化や側所的種分化が生じ得る。通常の進化的分岐条件の吟味には、具体的な数理モデルが必要となる。その場合、注目する形質以外の要素の時間変化を無視し、定数とすることが多い。しかしそれらの要素は、発生機構や気候のように、ゆっくりではあるが様々に変化しているかもしれない。そのような場合の進化的分岐の可能性を調べるために、モデル内の形質やパラメータの1つを未定のまま残し、「未定部分を適切に調節することで進化的分岐を生じさせることは可能か?」を吟味する条件(潜在分岐条件)も開発されている。本研究はこの条件を拡張し、モデルの核となる相互作用以外の全ての要素を未定として潜在分岐条件を吟味する手法を開発した。この手法は、任意の次元の形質空間に適用可能であり、原理的には関数型の形質(腕や脚などの3次元空間軸上の形態、資源軸上の資源利用分布、時間軸上の成長戦略など)にも適用できる。この手法を用いることにより、多様性進化の要因として注目する相互作用の潜在力を調べることができるだろう。


日本生態学会