| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-035 (Poster presentation)

攪乱のインパクトの定量評価:東北地方太平洋沖地震が岩礁潮間帯固着生物にもたらした影響

*岩崎 藍子(北大院・環境), 深谷 肇一(統数研), 野田 隆史(北大・地球環境)

攪乱が個体群に及ぼす直接的インパクトの大きさはその種の撹乱に対する感受性、攪乱の物理的強度および撹乱イベントの種類の違いによって決まると考えられるが、これら4者の関係はまったく明らかになっていない。なぜなら異なるタイプの撹乱イベント間での攪乱の物理的強度の比較方法も、個体群変動性の異なる種間での撹乱の個体群に対する直接的インパクトの比較方法も確立されていないためである。そこで本研究では、これらの問題に対応した攪乱の物理的強度と撹乱の個体群に対する直接的インパクトについて尺度を考案した。次に直接的インパクトの尺度を用い東北地方太平洋沖地震の津波が岩礁潮間帯固着生物5種に及ぼす影響を評価した。その結果、津波のインパクトは種間で明瞭な違いがなかったことが分かった。加えて、本地震の津波の固着生物へのインパクトの特徴を評価するために、様々なタイプの撹乱イベントと生物群において攪乱の物理的強度と撹乱の個体群に対する直接的インパクトを算出して比較した。その結果、本地震の津波の攪乱の物理的強度は他の撹乱イベントと比べて著しく大きかったにも関わらず、岩礁潮間帯固着生物への直接的インパクトは小さかったことが明らかになった。このように本研究で用いた方法は、種や撹乱のタイプの違いに関わらず撹乱の影響の定量的比較を可能とするため、生態系における撹乱の影響の理解の深化に大きく貢献すると考えられる。


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