| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-071 (Poster presentation)

絶滅危惧ダイトウオオコウモリの個体数推定

*中本 敦,傳田哲郎,伊澤雅子(琉球大・理)

ダイトウオオコウモリPteropus dasymallus daitoensisは琉球列島に分布するクビワオオコウモリの1亜種で南・北大東島にのみ生息している。両島とも島の大半はサトウキビ畑に転換されており、本来の植生は島を取り囲む斜面に帯状に残されているのみである。本亜種は生息地面積が狭いため生息数自体もそれほど多くなく、さらなる環境改変や台風の到来などによって絶滅する危険性が高いことから、環境省の絶滅危惧IA類や国内希少野生動植物種に指定されている。生息数については、2002年~2003年の時点でおよそ300頭という値が算出されている。演者らは昨年、およそ10年ぶりに約300名の島民による一斉カウント調査を南・北大東島で実施し、生息数の増減傾向としては、ほぼ横ばいからやや増加という結果を得た。このような定期的な調査は個体数のトレンドを知ることができるため保護対策上重要であるが、その一方で希少種に関しては実数の把握も行いたい。本種はその生態的な特性として、ハビタットを面ではなく点的に利用するため従来のハビタット解析が適用しにくい。さらに飛翔によって自由に移動することによる個体の離合集散が激しいといったことから、生息数の把握が難しい種である。これまでの手法は事前の痕跡調査などによって、島内のオオコウモリの全数カウントを目指したものであったが、現実的には見落としている個体も多いなどの問題点もあった。本発表では、2013年の一斉カウント調査のデータを使って、GISを用いた環境解析を加えた面積比から個体数を推定することを試みた。その結果、両島合わせておよそ300~500頭というこれまでと近似した値が得られた。ただしこの値は調査者の探索範囲の値に強く影響されることから、今後より詳細な検討が必要である。


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