| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-094 (Poster presentation)

カスミサンショウウオの血縁認識が成長と共食いに与える影響

増田萌子, 加島菜穂, 加島佳菜, *中村圭司(岡山理科大・生地)

両生類では、幼生時の生息環境によって発育・成長が影響を受ける。2頭のカスミサンショウウオ幼生を同一容器で飼育すると、単独飼育のときよりも体サイズが大きくなることを昨年度の本大会で報告した。また、一部のサンショウウオでは幼生期に共食いが起きることが知られている。このような同種個体間の競争は、同一卵塊から孵化したきょうだいの間より、血縁関係のない個体間の方が強くなる可能性が考えられる。本研究では、同一卵塊のみ、もしくは複数の卵塊から得られたカスミサンショウウオ幼生を集団飼育し、変態時期とそのときの大きさ、共食いによる死亡率等を比較することで、幼生の血縁認識が同種個体間の競争に与える影響を調べた。

岡山県真庭市でカスミサンショウウオ卵塊を採集し、孵化した幼生を実験室内の15℃一定条件下で飼育した。直径15cm、容量1500mlの飼育容器に、同一卵塊から得られた幼生、または複数卵塊から得られた幼生を10頭入れ、同じ量の餌を与えて育てた。定期的に共食いと死亡を確認し、外鰓が消失した時点で頭幅と体重を測定した。

共食いによる死亡率、それ以外の死亡率のいずれも同一卵塊からの幼生のみで飼育した場合に低くなる傾向があったが、複数卵塊由来の幼生を一緒に飼育した条件との間に統計的に有意な違いは検出されなかった。変態までの日数についても実験条件間に有意な違いは認められなかったが、変態時の体重は複数卵塊の幼生を一緒に飼育した場合の方が有意に重くなった。体長と頭幅も、複数卵塊の幼生を一緒に飼育した場合の方が有意に大きくなった。これらの結果より、カスミサンショウウオは同一卵塊から出てきたきょうだいと血縁関係のない個体を見分けることができ、親が異なる競争相手の存在下で積極的に採餌を行い、成長を促進すると考えられる。


日本生態学会