| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-103 (Poster presentation)

サッポロマイマイはなぜ木に登るのか?

*佐伯いく代(筑波大), 丹羽慈(自然研),長田典之(北大),兵藤不二夫(岡山大),日高周(自然研),太田民久(北大),日浦勉(北大)

カタツムリは我が国に約800種が生息し、その一部は樹上で生活する。しかし樹上は乾燥しやすく、光や温湿度の変化も激しいため、カタツムリにとって必ずしも好ましい環境とは言い難い。そこで本研究では、北海道の樹上性カタツムリサッポロマイマイを対象とし、本種がなぜ樹上のハビタットを選好するのか明らかにすることを目的とした。まず樹上と地表での生存率の違いを比べるため、サッポロマイマイ20個体を採集し、①木に登ることができないよう糸で地表に固定した集団と、②樹上に固定した集団を12日間、目視と赤外線センサーカメラで観察した。その結果、地表に固定したサッポロマイマイは設置後約2時間でエゾタヌキに全て捕食された。一方樹上の集団は、90%の個体が生存していた。次にサッポロマイマイと、カタツムリを捕食する地表徘徊性甲虫類(以下甲虫)の季節消長を比較した。サッポロマイマイは高さ14mのジャングルジムを用い、2~4週間ごとに樹上と地表での個体数を記録した。本種は5月上旬に越冬場所である落葉層から樹上へと移動し、8月に個体数増加のピークを迎えた後、10月上旬に地表へと降下していた。春と秋の移動期におけるピットフォールトラップでの甲虫の捕獲数は0またはそれに近い値であり、甲虫の活動が活発な6-9月には、サッポロマイマイは樹上で生活していた。これらの結果から、サッポロマイマイが樹上に生息することは、捕食者である哺乳類や甲虫との接触を避ける効果があると考えられた。さらにサッポロマイマイの食性について炭素・窒素安定同位体分析を行ったところ、本種はコケや地衣類を採食していると考えられた。樹上にはこれらの餌資源が豊富にあり、サッポロマイマイの恒常的な生息を可能にしているものと推察された。


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