| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-112 (Poster presentation)

マレーシアにおけるアナツバメの採餌行動

*藤田素子(京大・東南ア研),Charles Leh(サラワク博物館)

ショクヨウアナツバメ(Aerodramus fuciphagus)は,マレーシア・サラワク州のビンツル市に巣を養殖するツバメハウスが多数建設されたことから,都市にも分布を拡大させた.アナツバメは膜翅目などの飛翔性昆虫を採食するが,本来の生息地である天然林と異なり,都市の採食環境が適しているとは考えにくい.また都市近郊ではアブラヤシなどのプランテーションが広がり,まとまった天然林は30km以上も離れた地域にしか存在しない.都市に分布を拡大できた要因として,都市近郊のプランテーションか,遠くの天然林を採食エリアとしていることが考えられる.そこで本研究は,ビンツル市のツバメハウスに生息するアナツバメ個体群の採食行動に着目し,採食エリアを明らかにすることを目的とした.調査は2014年9月,ビンツル市から40km以内に設けた17地点の観察ポイントにおいて,6:00-8:30と15:30-19:00の間に,1分間観察を複数回行った.観察では,1分間に飛来したアナツバメの個体数と方角を記録した.また,ツバメハウス群に近く,多くのアナツバメの飛翔経路となっていたポイントでは,6:15-8:15の間,3-5分ごとに1分間観察を行った.この結果,アナツバメは早朝にツバメハウス群から南東に向かう個体が多く,夕方には北西に向かう個体が多いパターンがみられたことから,プランテーションのある都市近郊を越えて,ビンツル市から30km以上内陸の,天然林が多く残る地域を往復していることが推察された.つまり,アナツバメは都市近郊ではなく,天然林をメインの採食エリアとして利用していると考えられる.一方で,ビンツル市に残る個体も一定数いることや,夕方にはプランテーションなどでも数十~数百個体の群れによる短時間の採食がみられることから,都市や都市近郊もサブ採食エリアとして補足的に機能している可能性が示唆された.


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