| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-130 (Poster presentation)

放鳥されたトキの採食場所選択とトキ認証水田の利用

*熊田那央, 後藤由香(佐渡自然保護官事務所), 中津弘, 永田尚志(新潟大学)

新潟県佐渡市では2008年からトキの放鳥が行われており,野外で誕生した個体も含めて2015年1月時点で130羽以上のトキが佐渡島内で生息している.島内ではトキが利用する採食場所の確保のための取組の1つとして,トキ認証水田の整備が行われている.トキ認証水田は農薬の使用量を慣行農法の半分以下にすることに加え,冬期湛水,江,魚道,ビオトープの設置のどれかを1つ以上行う必要がある.

トキ認証水田が実際にトキに利用されているのか,いるとすればどの取り組みの効果が大きいのかを評価することは,今後のトキの採食環境整備のために重要である.そこで本研究では,モニタリングで得られたトキの位置データや,行動観察からトキ認証水田の効果を評価することを目的とした.

2つの方法でトキの採食場所選択を調べた.1つめはトキの採食位置データの空間解析である.環境省,新潟大学,地域のトキモニターボランティアから構成されるトキモニタリングチームによって得られた2011-2013年の位置データ11200点を利用し,トキ認証水田が選択されているかを検討した.2つめに,トキの採食行動を5分間観察し,トキ認証水田と慣行水田とで食物種や採食効率に違いがあるかを検討した.

個体の行動圏を位置情報から求め,そこに含まれる水田面積に占めるトキ認証水田の割合を調べた.面積割合は島内全体では横ばいにも関わらず,トキの行動圏内では年を追って増加する傾向がみられた.また,位置情報とランダム点とを比較すると,季節による違いはみられるもののトキ認証水田を選択する傾向がみられた.採食効率については,水田による違いはみられなかったが,トキ認証水田ではドジョウを多くとっていそうであった.以上の結果からトキの採食場所選択と認証水田の効果について考察する.


日本生態学会