| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-138 (Poster presentation)

広域データを活用した湖沼の水生植物多様性に影響する環境要因の検討

*西廣淳(東邦大), 赤坂宗光(農工大), 山ノ内崇志(東邦大), 赤坂卓美(帯畜大), 尾山洋一(筑波大), 松崎慎一郎(国環研), 高村典子(国環研)

湖沼生態系の物質循環ならびに物理構造上の重要要素である水生植物は、湖沼の干拓、人工護岸化、水質悪化など、さまざまな原因で衰退している。日本の水生植物は、その約半数がレッドリストに掲載されることにも反映されているように、現在、顕著に衰退しており、湖沼の環境変化もその一因となっていると考えられる。したがって湖沼における水生植物の保全は、湖沼の生態系の健全性の確保ならびに生物多様性保全上の重要課題である。

効果的な保全や再生のためには、衰退の原因となった主要な要因を明らかにし、その要因を一つずつ取り除くことが重要である。本研究では、日本の湖沼の水生植物相の衰退に影響する環境要因をマクロエコロジー的アプローチによって検討した。

2000年以前および2001年以降の両方の水生植物相データを完備した国内の46湖沼を対象に、過去から現在にかけての種の存続性(各種の存続あるいは消失の二値事象)を応答変数とし、各湖沼のリン濃度(富栄養化の指標)、コンクリート護岸率、ソウギョの導入の有無、湖沼の性状(面積、水深、標高、汽水性、流域面積)、集水域の土地利用に関する要因を説明変数とする一般化線形モデルによる分析を行った。その結果、リン濃度による負の効果に加え、過去にソウギョを導入した記録あるいはソウギョの生息記録がある湖沼では水生植物が残存しにくい傾向が示された。ソウギョは多くの場合、富栄養化が進み始めた時代に、水生植物の抑制を目的として人為的に導入されたものである。

水生植物相の回復のためには、流域での対策を含めた水質改善等の取り組みに加え、外来食植生魚類の除去などの管理を組み合わせることが重要であると考えられる。


日本生態学会