| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-143 (Poster presentation)

福井県北潟湖の自然再生に向けた植生変化と要因の解析

石井潤(福井県・里山里海湖研)

北潟湖(面積2.13 km2)は、福井県の最北端に位置し、日本海にそそぐ大聖寺川の河口付近に形成された汽水から淡水の湖である。湖の最下流部には開田橋水門が設置され、治水のための流量調整と湖の塩分濃度調節の役割を担っている。生物相は、汽水性から淡水性までの魚種が生息しており、マガン、ヒドリガモ、マガモの渡来地として環境省が定める「日本の重要湿地500」に登録されている。近年、湖の富栄養化、外来魚ブルーギルをはじめとする外来生物の侵入、湖岸植生帯の消失など、生物多様性および生態系保全上の課題がある。水門の設置によって淡水化が進んだ北潟湖は、農業用の利水や淡水での内水面漁業の場として地域の農業や漁業の発展に寄与してきたが、現在、湖の水を利用した耕作地での塩害の発生や漁獲量の減少など、その対策が必要とされている。2013年度には、「北潟湖自然再生に関する協議会」が設置され自然再生の取り組みが開始されるとともに、自然再生の目標と具体的な取り組みを定めた「全体構想」の策定が課題となっている。本研究では、全体構想の目標の検討のために必要な基礎情報として、北潟湖の過去から現在までの生物相の変遷を把握し、その要因を検討する。調査対象として、生物群集の基盤となる植生に焦点を当てる。過去から現在までの空中写真を判読して、植生を含む土地被覆(市街地、農地など)の変化を把握する。過去の植生の種構成は、博物館で保管されている植物標本および文献をもとに調査する。また、北潟湖周辺の地域住民と対象として、過去の生物相および環境に関する聞き取り調査を行う。以上の情報を統合し、現在までの植生と植物種の分布の変化を明らかにし、その要因を検討する。


日本生態学会