| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-144 (Poster presentation)

精度の低い環境データが分布予測に与える影響

*平山寛之, 粕谷英一(九大・理・生態)

生物を保全する上で対象種の分布を把握することは重要である。しかし、現実には調査によってすべての分布域を明らかにすることは不可能であり、分布推定モデルが広く利用される。分布推定モデルにより、特定の調査地点の気候や地形、土地利用などの環境情報の基礎データから実際には調査していない地点であっても潜在的なハビタットを推定し、その保護に活用することができる。近年、正確な推定を行うため、様々な分布推定アルゴリズムが提案されている。正確な推定のためには適切なアルゴリズムも重要であるが、精度の高い基礎データも重要である。しかし、土地利用の面積など連続的尺度で計測可能な基礎データであっても、計測の困難さからスコア(例えば被度など)のような情報量の低い順序尺度あるいは名義尺度で記録され、使用されることがある。こうした基礎データの情報量の低下は予測精度の低下をもたらす。しかし、特定のスコアに連続値のどの範囲を割り当てるかによって、同一の連続値データから得られるスコアの頻度分布は変化する。こうしたスコアの範囲の設定の違いは予測精度への影響が変化する可能性がある。本講演では連続的尺度で得られた基礎データを3通りの方法で順序尺度のスコアに変換し、情報量を低下させ、予測精度への影響を明らかにした。3つの方法とは、(1)等間隔変換:元データの最小値と最大値の間を等間隔にわけスコアに変換、(2)ゼロ抽出等間隔変換:元データの0は最少スコアに変換し、残りの0より大きい範囲を等間隔変換、(3)等量変換:各スコアに含まれる元データの数(地点数)が等しくなるように変換、である。その結果、(3)等量変換で予測精度の低下度合いが最も小さく、正確な予測をする上では各スコアに含まれる地点数が等しくなるような範囲設定でのスコアの使用が有効であると考えられる。


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