| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-145 (Poster presentation)

次世代シーケンサーを用いたイヌワシのマイクロサテライトマーカーの開発と遺伝的多様性の解析

*佐藤 悠 京都大学WRC, 伊藤英之 京都大学WRC, 大沼 学 国立環境研究所, 前田 琢 岩手県環境保健研究センター, 井上-村山美穂 京都大学WRC

イヌワシは日本のレッドリストでは絶滅危惧ⅠB類に分類されている。生態学的な研究により、行動の特徴や繁殖様式、環境利用などが解明されている一方、遺伝学的研究は数例のみである。個体識別や血縁度の解析といった保全遺伝学的かつ高精度な解析には種特異的マーカーが必須である。そこで我々は次世代シーケンサーを用いてマイクロサテライトマーカーを新規開発し、遺伝的多様性の解析を行うことを目指している。

秋田市大森山動物園で飼育されているメスの血液からDNAを抽出し、次世代シーケンサーion torrentを用いて解析した。得られたDNA断片は5,222,991リードであり、総塩基配列データは1.4 GBに及んだ。繰り返し配列が2塩基かつ7回以上繰り返される断片と、3または4塩基が8回以上繰り返される断片の計2,424断片がMsatcommanderによりマーカー候補として選択された。このうち48断片についてPRIMER3によりプライマーをデザインした。野生個体から採取したサンプルも含む31サンプルを用いてPCR増幅のテストを行い、11マーカーが有効であることが確認された。ヘテロ接合度の実測値(Ho)および期待値(He)はそれぞれ0.182–0.727(平均0.472)および0.275–0.744(平均0.544)となった。近交係数は0.127であった。

ヘテロ接合度の実測値にはHardy-Weinberg平衡から有意に逸脱しているものがあり、近交係数も高い数値が計測されたことから、近親交配が行われている、もしくは過去に経験した可能性があることが示唆された。今後、野生個体由来のサンプル数を増やし、慎重に評価する必要がある。


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