| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-148 (Poster presentation)

eDNA解析による舞鶴湾におけるマアジ資源量の推定

山本哲史(神戸大・人間発達),南憲吏(北大・水産),深谷肇一(統数研),益田玲爾(京大・フィールド研舞鶴),宮下和士(北大・水産),近藤倫生(龍谷大・環境ソリューション),源利文(神戸大・人間発達)

環境DNA解析法は、野外調査の人的コストを著しく節約しながらも広範囲での生物調査を可能にする調査法である。環境DNAとは環境中に放出されたDNAのことであり、淡水魚を用いた水槽実験では生物量が多いほど水槽中の環境DNA量も多くなることが報告されている。このことから、環境DNA解析法によって生物の分布とバイオマスの調査することが可能だと考えられる。

本研究では、環境DNA解析法が生物の分布調査に利用できるかどうかを、京都府北部の舞鶴湾西湾(約11キロ平方メートル)において検証した。マアジ(Trachurus japonicus)を調査対象とし、周波数120kHzの計量魚群探知機でバイオマスを調査しつつ、湾内の47地点において環境DNA解析用に採水した。実験室でDNA抽出を行い、qPCR法によりマアジの環境DNAを定量した。

結果として、マアジの環境DNA量は空間的にばらついてた。また、魚が水揚げされる市場付近では、環境DNA量が多く検出され、湾内の生きたマアジだけでなく、市場から流入したDNAも検出していると考えられた。市場からの距離と魚群探知機の計量結果を説明変数として重回帰分析したところ、マアジの環境DNA量は各採水地点の周囲のバイオマスと正の相関を示した。このことから、環境DNA量のばらつきはマアジの分布を示していると考えられる。

以上の結果から、本研究は、約6時間程度の野外調査で舞鶴湾西湾におけるマアジの分布と量のスナップショットを明らかにした。このことは、環境DNA解析法を利用することで、ごく短い期間における海洋生物の分布と量を広域にわたって明らかにすることが可能であることを示唆している。


日本生態学会