| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-158 (Poster presentation)

岐阜市における淡水魚の分布の現状とレッドリスト作成

向井貴彦(岐阜大・地域)

岐阜市は,岐阜県の平野部から山間地に移行する位置にある面積約200平方km,人口約41万人の地方都市であり,2009年度から2013年度に文献と実地調査による自然環境基礎調査がおこなわれた.魚類については,約500m四方の1/2地域メッシュを単位として分布情報を整理した結果,岐阜市域907メッシュのうち419の調査メッシュから10目19科61種(在来49種,外来12種)の分布が確認された.2014年度には,岐阜市版レッドリスト作成のために各魚種の生息状況の評価を行い,在来49種について分布メッシュ数を算出したところ、最も分布が多いのはオイカワ(256メッシュ)であり,上位11種までは100以上のメッシュで分布が確認された.定量的な減少率のデータがほとんどないため,レッドリストは現状での希少性に生態等を加味して点数化し,点数の総和によってカテゴリーの評価を試みた.希少性については,もっとも分布メッシュ数の多いオイカワを基準に,その約1/3の分布メッシュ数(80)に満たないものを潜在的なレッドリスト候補種として1点,さらにその半数(40)未満は2点,さらにその半数(20)未満は3点として点数化した.その上で,生息に特殊な条件が必要なものは相対的に絶滅リスクが高く,水産放流が行われているものは分布が過大評価されているため,1点ずつ加点した.また,採集が難しい種は分布が過小評価となり,生息環境が安定しているものと他地域からの移住が見込めるものは絶滅リスクが低いため,各1点ずつ減点した.基礎調査で確認されなかったが,過去の標本等の記録がある種を加えて,最終的に野生絶滅1種,絶滅危惧I類7種,II類7種,準絶滅危惧16種,情報不足4種としてレッドリストを選定した.他の地方版レッドリストと比較して,この方法の客観性等の検討を試みる.


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