| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-160 (Poster presentation)

八丈島における着生シダの分布状況と,シダ植物が着生したビロウの特性

*松井美咲,倉本宣(明治大・農)

着生植物とは、樹木や岩などに付着して雨水に依存している植物のことである。着生植物の中の維管束着生植物は、日本の照葉樹林を構成する維管束植物の1割以上を占めていることから、植物の種多様性の一役を担っていると評価は高い。このように森林内では研究・評価されるが、市街地などにおいては着生蘚苔類を除き、維管束着生植物の生態学的研究は非常に少ない。そこで本研究では、維管束着生植物の中の着生シダに注目して、街路樹など人為的ハビタットに生育する着生シダの生態、またビロウの特性と着生シダとの関係を明らかにすることを目的とした。

調査地は、東京都八丈島の内陸部にあたる八丈植物公園と沿岸部の外周道路の街路樹ビロウである。調査対象木は内陸部で97本、沿岸部で1055本とした。調査対象種はビロウとビロウに着生するオオタニワタリ、オニヤブソテツ、ノキシノブ、ヒトツバ、マツバランのシダ植物5種とした。

水平分布調査では、5種合わせた出現頻度は沿岸部は2%、内陸部は95%となった。一方で、ビロウ1本に対する垂直分布調査では沿岸部は出現頻度が低いため、種ごとの変化はあまりみられなかったが、内陸部はヒトツバが全階層で出現するなど、種によって差があった。また、質の違いによる垂直分布は、葉鞘部に多い種と樹幹部に多い種がみとめられた。さらに、ビロウの葉の管理がないよりも、適度な管理がある方が着生シダの出現頻度が明らかに高くなった。

着生シダの出現頻度は、内陸部、葉鞘部、管理ありの3つが揃ったときに最も高くなった。このことから、種によって好む環境は異なるが、八丈島ではビロウは着生シダのハビタットとなっていた。


日本生態学会