| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-162 (Poster presentation)

兵庫県但馬地域の冬期湛水田における水生動物群集の越冬状況―冬期湛水田は水生動物の越冬場所となりうるか?―

*田和康太(兵庫県大院・地域資源),北 郁雄(兵庫県但馬県民局),丸山勇気,佐川志朗(兵庫県大院・地域資源)

農閑期に水田を湛水する冬期湛水農法は水生動物の生息・越冬場所を創出することや餌を増やすことなどから,水田生物多様性の保全に大きく貢献するとされている.コウノトリの野生復帰に取り組む兵庫県但馬地域においても,農閑期のコウノトリの餌を確保するために,冬期湛水農法が大規模に導入されている.演者らは,これらの冬期湛水農法の水田(以下,冬期湛水田)において,厳冬期に水生動物群集を対象とした採集調査を実施し,水生動物群集の越冬状況を周辺の慣行田やビオトープ等の水域と比較した.

兵庫県豊岡市にある2つの水田地帯(祥雲寺,福田)において,2015年1月19日から30日にかけて調査を行なった.祥雲寺では,冬期湛水田,マルチトープ(承水路)付き冬期湛水田,慣行田(冬期に水域が残存する湿田),マルチトープおよびビオトープを各3枚ずつ,福田では,冬期湛水田,慣行田,旧式圃場整備の慣行田およびビオトープを各3枚ずつ,それぞれ調査地に設定した.水生動物(全長1 mm以上を対象)の採集にはタモ網を用い,各調査場所において8回ずつの掬い取りを行なった.

祥雲寺と福田で採集された水生動物は順に8綱15目38分類群2,913個体,7鋼12目21分類群3,371個体であった.どちらの地区においても個体数の最多はミミズ類(祥雲寺:1,349個体,福田:2,007個体)であり,次いでユスリカ科幼虫(祥雲寺:754個体,福田:876個体)であった.これらの水生動物は冬期湛水田よりも特に慣行田に多かった.また,冬期湛水田で採集された水生動物の分類群数は慣行田やビオトープの結果と大差なかった.これらの結果を踏まえ,水生動物の越冬場所としての観点から,冬期湛水農法について検討する.


日本生態学会