| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-170 (Poster presentation)

代替繁殖環境への誘導によるシロウオ保全対策

山田辰美(常葉大・社会環境),*法月直也,関川文俊(常葉大環防研)

シロウオLeucopsarion petersiiは、生活史の大部分を海域で過ごし、繁殖のために一時的に河川に遡上するハゼ科遡河回遊魚である。環境省第四次レッドリスト(2012)では絶滅危惧Ⅱ類、静岡県版レッドデータブック(2004)では絶滅危惧ⅠA類に選定されている。

本保全対策は、工事が計画された河川における本種の生息・繁殖状況を明らかにし、支川の環境改善を行い代替の繁殖地として誘導することで、本種への工事による影響を最小限にすることを目的とした。

静岡県牧之原市を流れる二級河川勝間田川では、平成20年から老朽化と拡幅のため旧橋梁撤去及び新橋梁建設の付替工事が実施されることとなった。本河川では過去にシロウオの遡上が確認されていた(板井ほか1998)ため、工事において本種個体群に影響が発生しないように、工事時期や工事方法に配慮するだけでなく、本種の生息環境について環境改善などの保全対策を検討する必要があった。そこで、平成19年度に遡上時期、河川流程における主な繁殖地及び仔魚流下時期を明らかにした。

その中で、勝間田川の支川である山田川で本種の営巣を確認できたことから、工事期間中の繁殖地として重要な役割を果たすと考えられた。しかし、懸念要因として、本川との合流部が土砂の堆積により狭いことや上流部にある帯工により遡上が阻害されていること、工事で発生した濁水が流れ込むことによる繁殖環境の悪化が挙げられた。それらの要因を解消し環境改善することで、本種を山田川へ誘導し本川の繁殖地の代替となると考えた。

牧之原市の積極的な対応により、山田川の環境改善を実施し、本種の保全に大きな効果が得られたため報告する。


日本生態学会