| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-175 (Poster presentation)

日本沿岸に生息するスナメリNeophocaena asiaeorientalis sunameriのMHC遺伝子DRB遺伝子座を中心とした多型解析

*會津光博(九大•比文),西田伸(宮大•教文),楠見淳子(九大•比文),田島木綿子(科博),天野雅男(長大•水産),吉岡基(三重大•生物資源),山田格(科博),荒谷邦雄(九大•比文)

スナメリは沿岸性の小型鯨類であり、日本沿岸の個体群においては、分布の不連続性や頭骨形態の差異、さらにmtDNA CR領域、マイクロサテライト解析により5つの地域個体群(仙台湾~東京湾、伊勢・三河湾、瀬戸内海~玄界灘、大村湾、有明海・橘湾)の存在が示唆されている。地域個体群の動態には地域固有の環境要因が関わっているため、保護管理ユニットを設定し、保全に向けた施策を考えていく上では機能的な遺伝子の解析が求められる。この点、免疫に関与するMHC遺伝子群は非常に多型性に富み、この遺伝的多様性を把握することは、地域個体群の持続可能性を考える上で有用である。これまでに行われた日本沿岸のスナメリのクラスⅡDQB遺伝子の解析では、大村湾と有明海•橘湾を除いた個体群間で有意な遺伝的分化と高い平均ヘテロ接合度が報告されている。しかしながら、MHC遺伝子群には多数の遺伝子が存在しており、その多様性の解明には複数の遺伝子の多型性の把握が求められる。本研究では、クラスⅡDQB遺伝子に加え、クラスⅡDRB遺伝子の多型解析を行った。DRB遺伝子に関して88個体を解析した結果、5種類のアリルを検出したが、平均ヘテロ接合度は非常に低かった(Ho=0.244)。一方、DQB遺伝子では86個体を解析した結果、8種類のアリルを検出し、比較的高い平均へテロ接合度(Ho=0.669)が観察された。遺伝子間で検出された多型パターンの違いは、遺伝子間で淘汰圧が異なっている可能性を示唆するものであり、より網羅的なMHC遺伝子の多型解析の必要性が示された。


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