| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-189 (Poster presentation)

カメラトラップによる撮影頻度は有効な密度指標になりえるか?―アフリカ熱帯雨林での検証―

*中島啓裕(日大・生物資源)

自動撮影カメラは,中・大型動物の個体数モニタリングを効率的に行う調査手法として,世界中の研究者に用いられるようになっている.自動撮影装置の撮影頻度(= 撮影枚数/調査日数)は,動物の密度指標として最も簡便なものであり,多くの研究者によって用いられてきた.しかし,撮影頻度は,カメラ設置点の環境や動物の行動による影響を受けやすく,動物の密度指標となりうるのかについての定まった見解はない.本研究では,アフリカの熱帯雨林に生息する中型ウシ科動物・ブルーダイカー(Cephalophus monticola)とオジルビーダイカー(C. ogilby)を対象に,ライントランセクト・センサスとカメラトラッピングを並行しておこない,推定密度と撮影頻度がどの程度相関するのか調べることにした.具体的には,十分離れた5箇所の調査地ででラインセンサスによる密度推定を行うとともに,各調査地に30台の自動撮影装置を2ヶ月間設置し撮影頻度を求めた.さらに,Rowcliffe et al. (2008) による密度推定手法(Random Encounter Model)を改良し,自動撮影カメラから得られたデータのみから密度推定をする手法を開発した.これらの結果,2種のダイカーで共に,推定密度と撮影頻度には非常に高い有意な相関が得られること,すなわち撮影頻度は,実際の動物のアバンダンスを強く反映していることが確認された.また,改良したモデルによる密度推定値の精度は高く,推定誤差は10%以内であることが分かった.本研究の結果は,比較的高い個体数密度を持ち,ほぼランダムにマイクロハビタットを利用する習性を持つダイカー2種から得られた結果であり,一般化することは出来ない.しかし,本結果は,生息地利用に偏りのない種においては,自動撮影装置の撮影頻度は有効な密度指標になることを強く示唆している.


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