| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-196 (Poster presentation)

プロジェクトレベルのREDD+環境セーフガード:実施とモニタリングの現状と課題

*古川拓哉(森林総研), 江原誠(九州大学), 岡部貴美子(森林総研)

世界の森林減少・劣化による温室効果ガスの排出削減を目的として、熱帯地域の発展途上国を対象としたREDD+(Reducing Emissions from Deforestation and Forest Degradation)と呼ばれる資金メカニズムが国際的に推進されている。排出削減が主たる目的であるREDD+が、生物多様性や生態系サービスに負の影響を与えないようにするため、環境セーフガードの遵守が国際的に合意されたが、その効果的な実施や透明性の確保が課題となっている。

REDD+は国・準国レベルの仕組みとして議論されているが、先行的・自発的な取り組みがプロジェクトレベルで進められており、その多くがセーフガード基準としてCCBS(Climate, Community & Biodiversity Standards)を参照している。プロジェクトレベルの活動は将来、REDD+が広域的に実施される前の実証的検証の機会と捉えられることから、セーフガードの実施と課題を把握するために、本研究ではCCBSに沿って作成されたプロジェクト設計書(PDD)とモニタリング計画書を対象に、環境セーフガードの計画段階での配慮と実施の課題を抽出するための分析を行った。

評価項目としては、生物多様性や生態系サービス保全への計画段階からの配慮、効果的なモニタリングの実施計画、モニタリング結果の公表と活用、周辺コミュニティとの協議・協働などの分野を設定し、それぞれ5~10程度の設問について各プロジェクトを採点した。その結果、国や準国レベルの生物多様性戦略や政策との関連付けが全体的に弱く、モニタリング計画の多くはセーフガード遵守の長期的効果やプロジェクト活動と関連付けた多角的評価を行うには不十分であるなどの課題が明らかになった。


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