| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


一般講演(ポスター発表) PB2-197 (Poster presentation)

霧島えびの高原におけるニホンジカの生息密度・行動圏配置と捕獲の効果

*矢部恒晶(森林総研・九州), 森川政人(環境省野生生物課), 松本晃(環境省えびの自然保護官事務所), 柳田蓉子(自然公園財団えびの支部), 日髙裕太(元環境省えびの自然保護官事務所), 橋之口愛子(環境省えびの自然保護官事務所)

霧島錦江湾国立公園えびの高原地区では、年間約60万人の観光客に利用されている一方、ニホンジカの高密度化が進み、自然植生への影響が深刻化している。また、餌付けによる人馴れ個体の増加や交通事故などの問題も生じてきた。今後の生態系保全や適切な国立公園の利用のために、シカの管理は重要な課題となっている。そこで当地区における現状把握と管理方策の検討のため、えびの高原中心部に設定した約32.6haの調査区画における月3回の個体数調査、GPS首輪による行動追跡、糞粒法による生息密度調査を行った。えびの高原では近年えびの市や環境省による管理捕獲や試験捕獲も行われたため、捕獲による変化も考察した。2008年8月から2014年10月までに調査区画で観察した個体の構成は、メスおよび若齢個体の割合が高く、オス成獣は秋から初冬のみ出現した。GPS首輪により追跡したメス個体の行動圏は、その多くがえびの高原周囲の山地斜面の内側に留まった。2010年度から2013年度にかけて行われたくくりワナ・箱ワナ・囲いワナによる捕獲では、合計102頭のシカが捕獲された。調査区画における年間の平均観察個体数は2009年から2013年にかけて約46頭から約7頭に減少した。2013年の糞粒調査による推定密度は、中心部の方が周辺部よりも生息密度が低い傾向を示した。これらのことから、えびの高原地区では定住性のメスおよび若齢獣の割合が高く、2010年からの4年間で人馴れした個体を中心にある程度捕獲が進み、近年シカが集中していたえびの高原中心部の生息密度が低下したことが示唆された。


日本生態学会