| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
シンポジウム S04-1 (Lecture in Symposium/Workshop)
地球環境の変化を前に、生態学は転換の時を迎えている。迫りくる環境変化に備え、未来の生態系を正しく予測し、適切な判断を下す必要性が一層高まりつつある。その判断において、これまで予測基準とされてきた「種分布モデル」は、時として誤った予測を生み出してきた。このモデルは、生物群集における最も重要な要因である生物間相互作用を考慮していないため、その適用条件が限定的となり、汎用性が低い点に課題が見られた。そこで、本研究では、生物間相互作用を取り入れた、より包括的な予測手法を解明すると同時に、環境変化に伴って種間相互作用が変化しやすい条件を実験的に解明した。
具体的手法としては、環境変化因子となる液体培地の塩分濃度を操作して細菌群集を培養する実験を行った。モデル生物として緑膿菌に焦点を当て、緑膿菌と他の細菌12種でペアをつくり、培養を進めた。48時間後、細菌の相対的個体群サイズについて蛍光プレートリーダーを用いて測定を行った。並行して、同様の塩分濃度設定において、各種を単独で培養した場合の個体群サイズの測定結果と比較した。その結果、系統的に離れた細菌(結果として、最適塩分濃度が異なる)ペアをともに培養した場合に、環境変化に伴って生物間相互作用強度がより変化しやすい傾向が見られた。この傾向は、種の個体数の将来予測がより困難となることを示している。すなわち、種間相互作用が変化しやすい条件(多種共存条件の変化の様相)を明確にすることで、生物多様性予測の限界点と可能性を決定付けることが可能となったと考えられる。