| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
シンポジウム S04-6 (Lecture in Symposium/Workshop)
この場で「ニッチとは何か」というタイトルでコメントを求められたのは、逆に自分が「ニッチ」から遠い存在だからだと思う。まず辞書を見るに、ニッチとは「各生物に必要な環境セット」みたいなものらしいので、逆にいえば「環境セットで表現する生物の個性」として上手く自己言及をさける「個性」の表現とも思える。さて本題の、5つの研究を見て。門脇氏の「ニッチが異なる群集ほど環境変化に複雑な応答をする」という傾向があるということは、「ニッチとは、異種間で足し算して何らかの答えを出せるもの」という事かもしれない(「足し算」≒「一般演算化」)。もしそうなら大槻氏が触れられる「違う物でもたくさん足すと平均化される」ことや、それにより「ニッチの違いを考えなくても説明できる」ことも必ずあるのだろう。逆にニッチを考えないといけない多種共存機構とは、「ニッチとはそこそこ足し算しても平均化しきれないぐらい色々と多様かつ非線形で複雑なもの」として扱って初めて気づくものかもしれない。その意味で、瀬戸氏の「隠れた生産者」や川津氏の「種内多様性」など、多様かつ入り組んだニッチの存在およびその取扱いがキーになり得る。さらに橋本氏の結果から、「ニッチとは相互作用の中で変化・発生するもの」であり「予めあるもの」ではない。以上から、「各生物のニッチは多様で複雑な違いがあって動的に変化・発生する」のに、それでも「変化しない」ような「多種共存機構とニッチの関係」を見つけられれば大興奮だと思う。こんなシステムの法則は知らないが、自然界では当たり前に存在する気もするので、発見したら相当すごいと思う。という事で当日が楽しみですが、教えてもらうだけじゃなくて、自分も今から当日までに何か思いつけば例えすぐ否定される陳腐なモノでも少し出してみたいと思います。