| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


シンポジウム S05-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

第四紀の日本における火山噴火の頻度と規模

井村隆介(鹿児島大・理)

2014年9月27日、長野県と岐阜県の県境にある御嶽山が噴火し、死者、行方不明者63人を出す大災害を起こした。しかし、この噴火は火山学的にはごく小規模なものであり、日本列島では、これと比べものにならないような大規模な噴火が繰り返し起こってきた。

爆発的噴火の規模を表す指標としてはVEI(Volcanic Explosivity Index)が使われることが多いが、この方法ではハワイのように爆発を伴わずに溶岩を流し続けるような噴火の規模を評価することができない。早川(1993)は噴出物の総重量を用いて噴火の規模を表す噴火マグニチュード(噴火M)を提唱した。具体的には噴火M=log m(噴出物質量kg)-7で示される。御嶽山の今回の噴出物量は50万トンで、噴火Mは1.7となる。噴火Mが1上がると、噴出物量は10倍になる。近年、桜島で起こっている1回の爆発は、大きなものでも噴火M=1にすぎない。新燃岳2011年噴火、桜島1914年大正噴火、富士1707年宝永噴火の噴火Mは、それぞれ3.7、5.6、5.2である。これらはその火山で数百年に1度くらいの頻度で発生する規模の噴火であるが、日本には110の活火山があるから、この規模の噴火は、数年に一度くらいは日本のどこかの火山で起こってもおかしくない。

九州には、阿蘇カルデラをはじめ、姶良カルデラや鬼界カルデラなど多くのカルデラが存在する。カルデラは過去の巨大噴火によって生じた地形である。カルデラを作る噴火は、噴火Mが7を超えるようなもので、日本全体では1万年に1回程度の割合で起こってきた。日本で最後に起こったこの規模の噴火は7300年前の鬼界カルデラの噴火である。日本列島、特に南九州の自然は、攪乱と言うよりも、噴火による徹底的な破壊とそこからの再生の繰り返しによって作られたものと言える。


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