| 要旨トップ | 本企画の概要 | | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨 ESJ62 Abstract |
シンポジウム S09-6 (Lecture in Symposium/Workshop)
近年、生物多様性の減少により、生態系が提供するサービスが減少していることが危惧されている。ここで言うサービスには、食料供給や水の保持など、環境面において人間が受ける利益のほか、レジャー、観光などの場所を提供する文化的なサービスが含まれている。この文化的サービスは、高い経済的価値を持っており、一例によれば、生態系が提供するサービスの経済的価値のうち、約40%を占めるといわれている。しかし、生物多様性や生息場所の構造など、各生態系が持つ特徴との関係はこれまで明らかにされていません。本研究では、全国にある109の1級河川全てにおける、のべ約600万人の河川のレジャー利用に関する大規模データ(国土交通省による河川利用実態調査)を解析し、以下のことを明らかにした。1)生物多様性(魚類の種数)が河川水辺のレジャー利用(釣りや水辺での遊び)を増加させること。2)河川の構造(護岸率、砂州、森林割合など)や水質(懸濁粒子量)、河川周辺の人口なども、河川のレジャー利用に影響を与えること。3)レジャーの種類(釣り、水辺での遊び、散歩、野球などのスポーツ)によって、影響を受ける要因が異なること。以上より、河川の生物多様性、生態系の構造や状態など生態系の様々な特徴が、文化的サービスを決める要因になっていることを明らかにした。これらの事例から,文化的生態系サービスと生物多様性の関係について議論したい。
参考文献:Hideyuki Doi, Izumi Katano, Junjiro N. Negishi, Seiji Sanada, and Yuichi Kayaba (2013) Effects of biodiversity, habitat structure, and water quality on human recreational use of rivers. Ecosphere 4:102