| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T09-4 (Lecture in Symposium/Workshop)

植物の防衛理論から植食者群集の生態ー進化動態を紐解く

*内海俊介(北大・FSC)

生態ー進化動態とは、生態的な動態(個体数や群集特性)と進化動態が双方向的に影響を与え合うことである。近年の実証研究によって、進化が迅速に起こりうることが明らかになってきたため、生態的な動態と進化動態の両者を考慮に入れた研究の必要性がさかんに主張されるようになった。しかし、動物と植物の相互作用分野においては、どちらか一方向の研究は蓄積しているものの、双方向のフィードバックを紐解いた事例はほとんどない。

この原因のひとつは、食われる植物の防衛の進化vs食う動物の個体群・群集という枠組みが圧倒的に強いためである。しかしながら、植物の世代時間は長く、植物の防衛の迅速な進化を追跡することが容易ではない問題がある。また、植物の防衛は、単一の形質によって成立するものではなく、植食者1種に対応したペアワイズな進化の結果でもない。むしろ、多重多層の形質群における植食者群集の構造に依存した拡散進化の結果であることが一般的であると考えられている。そのため、植物の防衛の進化動態と植食者の個体群・群集動態の連関を詳らかにすることが難しい。その結果、生態ー進化動態に関する予測の提出と検証が進みにくい。

本講演では、この枠組みを少しずらすことの効用について論じる。まず、植食者群集内における生態ー進化動態を考える。次に、植物の防衛に関する研究蓄積によるコンセンサスである①特異性、②最適防衛理論、③拮抗作用という3要素による植物個体が示す防衛応答での制約から植食者群集内における生態ー進化動態を予測しうることを示す。その中で、共生系への波及を考慮に入れる。そして、植食者群集内における生態ー進化動態から植物の防衛の進化へと展開させる可能性について論じる。これらを通して、生態ー進化動態の研究分野において、動植相互作用系が果たす役割について考えてみたい。


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