| 要旨トップ | 本企画の概要 | 日本生態学会第62回全国大会 (2015年3月、鹿児島) 講演要旨
ESJ62 Abstract


企画集会 T12-1 (Lecture in Symposium/Workshop)

落葉広葉樹林における土壌中放射性セシウムの空間的不均質性と環境要因

*高田モモ, 大庭ゆりか, Wim Ikbal Nursal, 山田俊弘, 奥田敏統(広島大院・総科)

2011年の福島第一原発事故により周辺域の森林に降り注いだ放射性セシウム(Cs-137)の分布を明らかにする目的で、落葉広葉樹林を対象にリター(落葉落枝)および土壌中に含まれるCs-137の時空間分布について調べた。

本研究では、福島県内の落葉広葉樹を主体とする二次林6か所を調査対象として、2013年8月から2014年8月にかけて、リター(落葉落枝)、土壌0 – 5 cm(表層)、および土壌5 – 10 cm(下層)の各層におけるCs-137量を測定し、それらの時空間変動(不均質性)を明らかにすることを試みた。なお、各層におけるCs-137量の空間的不均質性は、変動係数を用いて評価した。

調査・分析の結果、リター層から土壌10 cmまでに存在するCs-137の総量のうち、2013年ではリター層に62 %、土壌表層に30 %存在したが、2014年ではリター層で10 %に減少し、土壌表層では69 %に増加した。一方、土壌下層では、8 %から21 %に増加した。2014年8月における放射能を2013年8月に減衰補正したところ、Cs-137の総量に経年変化はみられなかった。Cs-137の空間的不均質性は、リター層から土壌下層にかけて増加する傾向がみられ、それらの不均質性は2013年に比べて2014年のほうが小さかった。

2013年8月の林床では、Cs-137を含んだ林内雨や樹幹流を介して土壌にCs-137が直接浸透した場所があり、それによって土壌層全体の空間的不均質性がリター層に比べて大きくなっていたと考えられる。その後、2014年8月では、時間経過に伴ったリターの分解によって、リター層のCs-137が土壌層へ移動することで、土壌中のCs-137が均質になったと思われる。


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