| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) D2-05 (Oral presentation)

鳥類の種子散布における群集間ネットワークの長期的動態

*大河原恭祐(金沢大・自然システム・生物),木村一也(金沢大・地域連携センター),庄藤瑞英(金沢大・自然システム・生物),松平有加(金沢大・自然システム・生物)

果実性食性の鳥種と大型果実を生産する植物種との間には被食型種子散布を通じた共生関係が成立しやすい。日本では秋に多くの果実食性鳥種が渡りのために飛来し、また同じ時期に多くの木本植物が果実を成熟させ、その種子が散布されている。この散布者としての渡り鳥群集の研究例から、この群集間ネットワークの構造は鳥の種構成や飛来数で変化し、特に植物群集の果実生産パターンに大きく依存していると考えられる。演者は2005年から2015年にかけて福井県越前市織田山で行われている鳥類標識調査にて、捕獲された果実食性鳥種の糞や吐き出し物に含まれていた種子の種類や頻度の観察を行ってきた。今回、その相互関係とネットワーク構造の変化を調べ、それらに影響を与える要因について解析を行った。総計24種の鳥種から種子の入った排泄物サンプル1661個が採集され、それらから62種2208例の植物種子が確認された。主要な種子運搬種はシロハラ、マミチャジナイ、メジロの3種で、全運搬例の79.8%はこの3種で占められていた。一方、植物側もタラノキ、カラスザンショウなど6種が全運搬例の71.5%を占めており、両群集間の関係は入れ子型構造を示した。また植生調査から調査地周辺の植物種の多くが隔年で果実を生産し、野外果実量は増減を繰り返していたが、果実量の多い年と比較して少ない年では種子運搬頻度は高く、入れ子構造度も高くなる傾向がみられた。この事から少なくとも野外果実量が鳥群集と植物群集間のネットワーク構造に影響を与える要因の1であることが示唆された。しかし鳥種の果実選好性の変化など他の要因も関係していると思われる。


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