| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) H3-26 (Oral presentation)

風媒の雌雄異株植物スイバの形態に性的二型性はあるか

*松久聖子, 丑丸敦史(神戸大・人間発達環境)

植物の繁殖器官の形態の性的二型性には、オスは花粉散布、メスは花粉受け取りと種子散布に関わる選択圧が影響しており、風媒種の雌雄異株植物は虫媒種よりも形態の二型性が大きいと言われている。風媒種では、開花開始期、満開期、種子散布期という各ライフステージに応じて繁殖成功に有利な形態が雌雄で異なるため、各ライフステージにおける性的二型性は異なる可能性がある。しかし、検証は主に花茎の高さに限定され、繁殖成功とのつながりもわかっていない。そこで本研究は、オスは花茎の上部で花粉を放つのがよい、メスは花粉の受け取りは花茎の下部がよく、種子散布は上部がよいと仮説を立て、風媒の雌雄異株植物スイバの野外集団を対象に、各ライフステージにおけるより詳細な形態の性的二型性(花茎の高さ・花序枝の長さ・花序枝を伸ばす角度)と、繁殖成功との関係を明らかにすることを目的に調査した。その結果、オスの花粉散布に有利と思われる花茎の高さは、仮説に反して満開期でもメスの方が高かった。花序枝の長さは、開花開始期・満開期はオスの方が長く、種子散布期になるとメスは長く伸びた。花序枝を伸ばす角度は、満開期はオスの方が狭く上方向に伸ばし(一次花序枝と二次花序枝の角度が狭い)、逆にメスは花序枝を広げた(花序枝間の角度が大きい)。種子散布期になるとメスの花序枝の角度は狭く上方向へ伸びるように変化した。よって、花序枝の角度は仮説を支持していると考えられる。繁殖成功については、花序内の高さ別に、オスは個花あたりの花粉生産数と花粉散布量、メスは個花あたりの付着花粉数と花序枝あたりの結実率を調べたが、位置による大きな差は見られなかった。ただし、メスの花序枝の角度を変化させる実験では、形態を細くした花序枝は自然状態のものと比べて結実率が低下したため、花粉の受け取りに花序枝の角度は影響していると考えられる。


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