| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-03 (Oral presentation)

旧熱帯区山地林の組成と気候条件の比較および全北区との関係性について

目黒 伸一

旧熱帯区における赤道直下の山地林は東アフリカと東南アジアに限られる。世界的にみて両地域の森林組成の比較についての報告は多くない。そこでこの両地域山地林の組成を比較し、その気候条件として温量指数を用いて検討し、広域的普遍性の有無を考察した。植生調査は、植物社会学的方法にしたがい、ケニヤとマレーシア・ボルネオで行った。解析方法として、群落区分種群中に所属する科の割合の挙動を検討した。

調査解析の結果、海抜が高くなるにしたがい、ブナ科、ツバキ科、バラ科、ヤブコウジ科、フトモモ科、マキ科の区分種率が増大していた。ケニヤでは海抜が上がるにしたがってバラ科、ヤブコウジ科、クスノキ科、マキ科の区分種割合が増加していた。したがって両地域山地林には共通してバラ科、ヤブコウジ科、クスノキ科が海抜の上昇とともに増加することが明らかになった。このことは、北半球高緯度への広がりと一致し、赤道直下の垂直分布が北半球高緯度への水平的分布と重なることを意味する。

Ohsawa(1990)は東南アジアの垂直分布は高地になるにしたがいブナ科など北半球暖温帯林構成種群と共通性があることを指摘したが、それのみならず旧熱帯区の垂直分布とが全北区への相同性が明らかになった。

また群落の温量指数の比較を行った結果、各群落が熱帯から冷温帯までよく対応していることが明らかとなった。したがって、本研究で区分された群落レベルでは基本的に温度条件に寄与していることがわかり、群落分類上より上位区分に位置するものと予想される。

一方、フトモモ科とマキ科の2つの科は、ゴンドワナ要素に属し、被陰されない、貧養地や過湿立地を好む傾向にある(Morley, 2000)。したがって、ゴンドワナ種の特徴が東アフリカと東南アジアの出現挙動において生態的に共通して保存されていることも明らかになった。


日本生態学会