| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J1-07 (Oral presentation)

植物群集の非ランダムな花色構成:互いに異なる在来種・その和を乱す外来種

*牧野崇司(山形大・理), 横山潤(山形大・理)

黄色いタンポポや赤いツツジ、青いリンドウなど、野外では様々な植物が多様な色の花を次々と咲かせる。こうした花色の多様化に関わる要因の一つとされるのが、同時に開花する他種の存在である。花粉を運ぶ送粉者はしばしば花の色を学習し、同じ色の花を続けて選ぶ。ゆえに他種と異なる色の花を咲かせれば、送粉者が同種にのみ訪問する可能性が高まり、花粉を効率良く受け渡すことができる。そのため植物群集は、互いに花色の異なる種によって構成されるとの予測が立てられる。

ところがそうした花色の過分散(overdispersion)が検出されることは稀であり、花色の過分散を打ち消す要因の存在が示唆される。その一つとして考えられるのが外来種である。外来種が在来種とよく似た色の花を咲かせる例は多く知られており、そうした外来種が過分散の検出を難しくしているのかもしれない。

本研究では山形県上山市において、林縁・湿地・耕作地などを含む約2.4kmの調査路を定め、そこで開花する植物種を、2014年の4月下旬から11月上旬にかけて、週に1度記録した。また、開花が確認された全244種の花の分光反射率を測定し、送粉者が視覚的に感じる種間の花色の隔たりの大きさ(色距離)を、ハナバチの色覚モデルを用い計算した。そして、ある種から残り243種に対する色距離の平均値を、その種の他種に対する色距離の期待値として用いた。

この期待値を、同時に開花する種に対する色距離の平均(実測値)と比較したところ、約7割の植物種が、他種と色の隔たる時期に花を咲かせていた。また、期待値と実測値の差の平均をランダマイゼーションで検定したところ、同時に開花する種の花色が偶然では考えにくいほど互いに異なることがわかった。さらに外来種32種を解析から取り除くと花色の過分散は有意に増加し、花色を介した撹乱が示唆された。


日本生態学会