| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(口頭発表) J2-15 (Oral presentation)

ボルネオ熱帯低地の自然林・二次林生態系における地上部純一次生産の窒素・リン施肥への応答

*今井伸夫(京大・霊長研),北山兼弘(京大・農・森林生態)

高温多雨のために土壌風化が進んでいる湿潤熱帯では、森林の生産や分解がしばしばリンPによって制限される。一方、人為撹乱を受けた二次林では、窒素Nの制限を受けることが知られている。この熱帯林生態系の窒素・リン制限仮説は、しかしながら状況証拠からの推論に基づくものであり、野外施肥実験によって直接検証された例はほとんどない。そこで、ボルネオ熱帯低地の自然林および二次林生態系において野外施肥実験を行い、樹木の成長速度とリターフォール量の窒素・リン施肥への応答を調べた。

マレーシア・サバ州デラマコットの自然林と択伐林にそれぞれ、40×30mプロットを4処理(+N、+P、+NP、無施肥)×3反復=12個設置した。2011年12月、Dbh2.5cm以上の樹木のdbhと樹種を記録し、施肥実験を開始した。施肥開始3年後にDbhを再測定し、樹木の相対成長速度Rgrを求めた。自然林にリタートラップを設置し、リター生産量を測定した。

原生林の総リターフォール量は、施肥開始後4年目に+NP区において増加した。原生林のRgrは施肥により概ね増加し、優占種群であるフタバガキ科では特に+PでRgrが増加した。しかし、Dbh20cm以上の大きな個体では+Pと+NPの効果は見られなくなった。択伐林のRgrは、+Pと+NPにより増加した。しかし、Dbh20cm未満の小さな個体では+NPの効果は見られなくなった。このように、熱帯低地林の生産性は窒素・リン両方の制限を受けているが、その制限パターンは森林タイプや樹種、樹木サイズにより変化することが分かった。


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