| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-003 (Poster presentation)

岩礁潮間帯における固着生物群集の時空間変異性

*立花道草(北大院・環境), 野田隆史 (北大・地球環境)

局所群集における多種共存機構は,安定化メカニズムと等質化メカニズムに大別できる.前者は種間で資源,天敵,およびそれらの影響を受ける時間や空間についてのニッチが分化することで働く.一方,後者は群集全体での種間の平均適応度の差を小さくすることで働く.これら2つの共存機構は同一の局所群集でも両方が働くと考えられ,それらの相対的重要性は環境や種組成に依存して空間的に変化すると考えられるが,特定の生物群集において両共存機構の相対的重要性がどのように空間変異するかを明らかにした研究はない.

安定化メカニズムと等質化メカニズムの相対的重要性は,同一群集内の種間の個体群の同調性から判定できるだろう.なぜなら,ニッチ分化をしている種間では,そのニッチ軸に沿った環境の変化に対する個体群の応答も異なるため個体群の動態が非同調となるはずであり,一方,生態的に同等な種間では,環境が変化したときの個体群の応答はまったく同じとなるので個体群動態は同調するはずだからである.

岩礁潮間帯では垂直方向では潮汐に起因する明瞭な環境勾配が存在し,水平方向では距離が離れるほど環境の類似性が低下する.そこで,本研究では岩礁潮間帯固着生物を対象に局所群集内の種間の個体群の同調性が垂直方向と水平方向でどのように変化するかを明らかにした.

北海道東部の5海岸の25岩礁の4潮位に設置した方形区で固着生物の被度を12年間調査し方形区内の種間の個体群の同調性が潮位間と海岸間でどのように異なるかを解析した.

その結果,同調性は海岸間では差が見られなかったものの,潮位の低下に伴って減少した.これは岩礁潮間帯固着生物の多種共存機構の相対的重要性は,潮汐に起因する環境勾配によって変化するが,海岸間の環境の違いに左右されないことを示唆している.


日本生態学会