| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-011 (Poster presentation)

無肥料無農薬水田における雑草群集構造の決定要因

*細谷啓太(岩手連大農), 杉山修一(弘前大学農)

外部からの農業資材の投入がない無肥料無農薬水田では,湿地性動植物のハビタットとしての機能が高い反面,作物生産への雑草害がしばし問題となる.このジレンマを解決するためには,雑草の植生を規定している要因を明らかにし,効果的な雑草管理戦略を構築する必要がある.北日本地域における16の無肥料無農薬水田を対象とし,現地水田の植生調査とシードバンク試験を組み合わせて,雑草群集構造のポテンシャルと実際とを比較した.また,一般化線形モデルを用いた解析(GLM解析)と主成分分析,Mantel-testにより,雑草全体の発生量と雑草群集構造におよぼす環境要因の影響について解析した.解析の結果,無肥料無農薬水田における雑草乾物重は水田間で大きな変異があり,特に高緯度地域の日本海側,および日照時間の少ない地域で発生量が多いことが分かった.これは,無肥料水田におけるイネの生長は地力窒素発現への依存度が高いため,イネの生長が緩慢な寒冷地域では移植のアドバンテージが相対的に小さくなり,雑草が光・養分競合の点でイネよりも優勢に立ったためと考えられる.また,雑草群集間の相違度はシードバンク・土壌・気象・地理的要因の相違度を反映していなかったが,雑草種別にみるとそれぞれに異なる環境要因が群集構成比の増減を規定していることが明らかとなった.以上のことから,無肥料無農薬水田における雑草発生量には緯度や経度,日照といった地理的・気候的要因が関与しているが,雑草群集構造に対しては距離や環境変化に伴う空間分化は生じていないことが明らかとなった.


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