| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-016 (Poster presentation)

モンゴルのステップ草原における家畜食害はアーバスキュラー菌根菌群集に影響を与える

*日下部亮太(千葉大院・教育), 谷口武士(鳥取大・乾地研), Jamsran Undarmaa(モンゴル国立農業大), 山中典和(鳥取大・乾地研), 大和政秀(千葉大・教育)

近年、モンゴルのステップ草原では過放牧による植生劣化が大きな問題となっている。アーバスキュラー菌根菌(AM菌)は多くの植物と共生するため、草原植生の維持や回復において重要な存在だと考えられる。そこで本研究ではモンゴルのステップ草原における家畜食害がAM菌群集に与える影響を調査した。

調査は、2014年8月上旬にモンゴルのフスタイ国立公園およびその周辺にて行った。家畜の食害強度を3段階に分け、それぞれから3か所ずつ、計9か所の調査地を設定した。各調査地において1×1 m のプロットを3個ずつ設置し(計27個)、各プロット内において植物種組成、植物バイオマス、土壌化学性を調査するとともに、植物根からDNAを抽出し、AM菌特異的プライマーを用いてPCR増幅した後、次世代シーケンサーIon PGMを用いてSSU rDNAの塩基配列を決定した。得られた配列を97%の相同性閾値でクラスタリングして操作的分類単位(OTU)を作成した。

調査地全体で5科46 OTUのAM菌が得られた。プロット間のOTU組成の非類似度(Bray-Curtis指数)を算出し、非計量多次元尺度構成法(NMDS)による解析を行ったところ、3つの食害強度の間で群集構造が有意に異なっていた。また、AM菌群集構造と植物の地上部および地下部バイオマス、優占種であるイネ科のStipa kryloviiバイオマス、植物種数との間には有意な相関が見られた。さらに、土壌化学性のうち、土壌pHと可給態リン酸が食害の進行に伴って上昇する傾向が見られ、群集構造とも有意に相関していた。以上のことから、家畜食害による植生劣化と土壌化学性の変化がAM菌群集構造を変化させると考えられた。


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