| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-020 (Poster presentation)

閉鎖林冠下のチシマザサ一斉更新過程における面的クローン成長の役割

*工藤恵梨,松尾歩(秋田県大・生物資源),金子悠一郎,富松裕(山形大・理),蒔田明史(秋田県大・生物資源)

クローナル植物は、ラメット間で同化産物や養分などを転流することができ、林床のように光や土壌養分が不均質な環境で効率的な資源利用ができるとされる。しかし、典型的なクローナル植物であるササの一斉開花枯死後の回復で生理的統合が機能しているかどうかについてはわかっていない。そこで本研究では、更新過程のササを、調査区内で発芽した定着ジェネット(以下“定着”)と周囲から地下茎により侵入してきた侵入ジェネット(“侵入”)の2タイプに分け、それらを比較することにより一斉更新過程での平面的なクローン成長の役割を考察した。

調査は、秋田県十和田湖南岸域のブナ林内チシマザサ枯死域で、林冠状態の異なる3区(閉鎖林冠、半閉鎖林冠、ギャップ)に設置された3x3mの2反復計6区で行った。この調査区では2005年にササ稈の位置と太さ、稈齢、及び調査区内の各ジェネット発生場所が調査されている。2015年に①ササの回復を知るために、稈の生残、太さ、稈齢を測定しマイクロサテライト7遺伝子座によりジェネット識別を行った。②閉鎖林冠下の“定着”・“侵入”両タイプのサイズ把握のため、タイプごとにサイズの大きい5個体の地下茎の総延長、稈の位置・太さ・稈齢を測定し、うち“侵入”6ジェネットでは稈直上の光条件を測定した。地上部バイオマスは、稈齢、太さからアロメトリー式で推定した。

半閉鎖林冠下を除き、バイオマスに占める“侵入”の割合は高く、ジェネットあたりの地下茎の総延長や地上部バイオマスは“侵入”の方が著しく大きかった。さらに、明るい場所から閉鎖林冠下へ侵入しているジェネットが確認され、更新過程において平面的クローン成長が大きな役割を果たしている可能性が示唆された。


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