| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-021 (Poster presentation)

ナラ枯れ被害林分における低木の動態と高木生実生の更新

*高橋沙也香(新潟大・農),本間航介(新潟大・農)

ナラ枯れ被害後のミズナラ二次林において林冠構成種の実生定着を促進する手法を検討するために操作実験を行い、2011年から2015年まで5年間のモニタリング調査を行うことで、以下の作業仮説を検証した。仮説A)低木の発達により高木性実生の定着が阻害されている。仮説B)未分解の落葉層の蓄積により高木性実生の定着が阻害されている。

新潟県佐渡島金北山南斜面のナラ枯れ被害地に50m×50mの調査区を設置し10m×10mのサブプロット25個に分割した。各サブプロットに実生調査区を設置し、低木刈り払い、土壌A₀層掻き起こしを行った。刈り払い処理と掻き起こし処理はそれぞれの有無を組み合わせて4条件×25反復行った。また、低木の成長パターンを節間成長などの解析により定量化し、ナラ枯れ後の林分の森林機能を回復させるための効果的な施業について検討した。

高木性実生ではミズナラ、イタヤカエデ、亜高木性実生ではカエデ類(ハウチワカエデ、ヤマモミジ、その他のカエデ)、アオハダが出現し、全ての種において刈り払いを行うと実生の個体数が有意に増加することが示された。刈り払いを行わなかった場合、実生の個体数は極めて少なく、実生バンクは形成されなかった。掻き起こしによる効果と両者の交互作用は検出されなかった。低木の刈り払いは極めて効果的である一方で林床の掻き起こしは効果がないことが示された。

低木はナラ枯れ後3年間で急激に幹数が増加したが、幹本数を増加させ生育範囲を獲得していく常緑低木と、萌芽の急激な伸長成長により常緑低木の上層に展開する落葉低木に成長パターンが分けられた。落葉低木は幹長の伸長成長に伴いキャノピー面積を拡大させる能力が高いことが示された。実際の森林施業では、高刈りを数年間繰り返して落葉低木を除くことで一定の効果が期待できると考えられる。


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