| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-042 (Poster presentation)

木本性ツル植物フジの当年生実生の空間分布と環境要因の関係

*森英樹(筑波大学・生命環境),直江将司(森林総研),上條隆志(筑波大学・生命環境),正木隆(森林総研)

木本性ツル植物は、樹木に生育阻害といった負の影響を及ぼすことで、森林の構造や動態に影響を及ぼす。樹木と同様にツル植物の空間分布は周辺環境の影響を受けやすく、その影響は種子から実生の段階において顕著であると考えられている。そのため、当年生実生の空間分布に影響する環境要因の特定は、ツル植物の空間分布決定メカニズムの理解、さらにはツルによる森林構造・動態への影響の空間的な評価にもつながるだろう。そこで本研究では、木本性ツル植物フジの当年生実生の発生数と生存率の空間分布を明らかにし、さらにその空間分布に影響している環境要因を特定することを目的とした。調査地は茨城県北茨城市に位置し、落葉広葉樹の老齢林の小川試験地(6ha)である。調査は2012年から2015年にかけて毎年5月と10月に行い、調査地に10m間隔で格子状に設置した1m2のコドラート651か所に存在したフジ当年生実生に個体番号をつけ、その生残を追跡調査した。応答変数はコドラートあたりの実生の発生数および生存率、説明変数は実生の最近接結実木からの距離、リター層の厚さ、開空度、土壌含水率、ササの有無とし、一般化線形モデルで解析した。実生と結実木間の距離の推定のため、2015年に調査地内の樹木(DBH≥5cm)に登はんする全てのフジ(DBH≥1cm)を対象に結実調査を行い、結実木の位置を特定した。本研究の結果から、フジ実生の発生数は結実木から近いほど、またササがない場所で多いことが明らかになり、種子散布制限やササ内でのネズミによる捕食の影響が示唆された。一方、生存率は開空度が高く、ササがない場所ほど高くなり、主に光環境やササの存在がフジ実生の生存を制限していると考えられた。


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