| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-056 (Poster presentation)

ナニワズの性的二型性:両性株と雌株の表現型と繁殖成功度の比較

*柴田あかり(北大・環境科学),工藤岳(北大・地球環境),亀山慶晃(東京農大・地球環境)

被子植物において、雌雄異株性は両全性から進化したとされており、その進化経路の一つに雌性両全性異株性を介した経路がある。ナニワズは両性株と雌株からなる雌性両全性異株植物である。ナニワズは雌雄異株性への進化過程にあると仮定すると、両性株の繁殖特性は雄株に近いと期待される。

北海道内の3個体群において花数と果実数を調べ、それをもとに結実率を求め、両性株と雌株間で比較し、年変動も調べた。さらに、7遺伝子座のマイクロサテライトマーカーを用いてそれぞれの個体群における両性株の自殖率と近交弱勢を求めた。

3個体群全てにおいて、両性株は雌株より1.5倍近く多くの花をつけた。結実率には年変動が見られ、雌株は両性株より3から20倍近く高い結実率を示した。繁殖への総資源投資量(花生産+果実生産)の性差は年度間で異なり、結実率の増加に伴い雌株の投資量が大きくなった。また、両性株における自殖率は比較的高く、近交弱勢も高い値であった。両性株は結実率が低い上に、自殖により結実したとしても、その種子の適応能力は低いと考えられる。表現型の性的二型性に加え遺伝解析の結果からも、両性株は機能的に雄株に近いということがわかった。このことから、ナニワズの繁殖システムは雌雄異株性に近いといえる。


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