| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-088 (Poster presentation)

ポリアミンによる光合成促進機構の探索

*松山秦,杉村尚倫,末弘宗滉,白沢駿,安元剛,神保充,渡部終五(北里大学海洋生命科学部),坂田剛(北里大学一般教育部)

ポリアミンは分子内に複数のアミノ基を持つ低分子化合物の総称で,すべての生物生体内に含まれる事が知られている.ポリアミン溶液は大気中のCO2を濃縮する働きがあり,サンゴの骨格形成や,植物の光合成を促進する事が明らかになりつつある.

植物が光合成に用いるCO2は,気孔から葉内へ拡散し,その後ルビスコにより有機物へと固定される.植物が,乾燥ストレスによって気孔を閉じると,葉内は光合成に必要なCO2が不足して,光合成は低下する.本研究は,葉内のCO2が不足した際に,ポリアミンによる光合成促進が活性化し,光合成維持に役立っているか検討し,その光合成促進機構を探索する事を目指す.そのため,葉にポリアミン阻害剤を付与し,光合成の応答を調べた.

材料には,ダテ科多年生植物のイタドリを用いた.葉を光合成測定の前日に採取し,茎からコントロールに用いたDW,ポリアミン生合成阻害剤,そしてポリアミン輸送体阻害剤を1晩吸水させ光合成の測定に用いた.光合成の測定はCO2濃度400 ppmで開始し,葉の光合成速度が安定した事を確認した後,その半分の200 ppmに落とし,低CO2下での光合成の応答を評価した.

DWを吸水した個体は,低CO2に応答して光合成能力が素早く上昇し,その後光合成速度はすぐに安定した(ほぼ1分以内).一方,ポリアミン生合成阻害剤や,ポリアミン輸送体阻害剤を吸水させた個体では,低CO2への応答速度が遅く安定するまでに20分程度が必要であった.本報告では,葉内のポリアミン含量の測定結果と合せて,ポリアミンによる光合成促進機構の探索を行う.


日本生態学会