| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-092 (Poster presentation)

タケノコと樹木の呼吸スケーリングは何故似ているか?

*王莫非, 芳士戸啓, 相澤拓, 森茂太(山形大・農)

生物の個体サイズに応じた呼吸速度は、経験的にMax Kleiberの法則「個体呼吸は個体重量の3/4乗倍に比例」に従うとされる。この法則を「空間を満たすフラクタル関数に従う分枝構造」から理論的に説明したとするWBEモデル(1997)が提案された。しかし、異論も多く個体呼吸制御のメカニズムを巡って様々な議論が今も活発に行われている。

上記の議論で、個体に占める葉の呼吸が呼吸制御に重要な役割を果たすとの指摘もある(Enquist, 2006)。そこで、本研究ではタケノコ(葉を開く前のタケシュート)の呼吸を幅広いタケノコサイズに応じて測定して、呼吸とサイズの関係を検討した。

鶴岡市の山形大学農学部苗畑のモウソウチク竹林で、重量5gから20,100g(生重量幅4000倍)のタケノコ81本を材料に用いた。タケノコの長さは0.06~12.1mであり、タケノコ全体をチャンバーに密閉して呼吸を測定した。このうち、大小14本のタケノコについてはシュートを分割して呼吸測定を行い、シュートの位置に応じた呼吸を評価した。

葉の無いタケノコの重量と呼吸の関係は、両対数軸上で傾き0.85の単純ベキ乗式でモデル化できた。さらに、これまで測定してきた実生から大木までの254個体の葉のある樹木地上部の重量と呼吸の単純ベキ乗モデル(Mori et al.,2010)と比較した。その結果、葉の有無にかかわりなく両者の傾きはほぼ同じであった。また、タケノコの呼吸はどの重量でも樹木の約6倍の値を示した。

葉の有無は光合成の有無を意味しており、こうした違いにも関わらずタケノコと樹木の双方の地上部で同じ傾きが示された。これは、上記のEnquist(2006)の指摘とは異なる制御が存在している可能性を示唆するものであり、呼吸制御を生物学的な要因を超えて幅広い視点からも検討する必要がある。


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