| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-099 (Poster presentation)

アカガシのナラ菌に対する抗菌物質

*染谷汐織,原若輝(筑波大学・生物資源),山路恵子(筑波大学大学院・生命環境),市原優(森林総研関西)

ブナ科樹木萎凋病はブナ科12樹種に被害が確認されている重要森林樹木病害の一つである。カシ類、シイ類、コナラ、ミズナラの順に本病害の病原菌(ナラ菌:Raffaelea quercivora)に対して抵抗性が高いことが知られている。本研究では、アカガシ、マテバシイ、ミズナラの3樹種を対象に、総フェノール及び縮合タンニン濃度を測定した後、総フェノール濃度が最も高く、被害樹種のうち最も抵抗性が高いとされるアカガシの抗菌物質の同定を目的とした。

2013年7月に苗畑にて7-9年生アカガシ、マテバシイ、ミズナラにナラ菌を接種後、10、20、30日目に伐採し、辺材を変色部と健全部に分けメタノールで抽出した。各樹種の抽出液はFolin-Ciocalteu methodによる総フェノール濃度の測定、Butanol testによる縮合タンニン濃度の測定に供した。30日目の変色部と健全部における総フェノール濃度はアカガシが最も高く、次いでマテバシイ、ミズナラであった。縮合タンニン濃度はマテバシイが最も高く、次いでアカガシ、ミズナラであったがその差は顕著ではなかった。以上の結果より、本研究ではアカガシの抗菌物質に着目することにした。アカガシの変色部と健全部の抽出液は減圧濃縮後、酢酸エチル層と水層に分液し、酢酸エチル層は抗菌活性試験(Cladosporium herbarumを用いたTLCバイオオートグラフィー)に供した。その結果、抗菌活性は変色部及び健全部に確認され、健全部より変色部の抗菌活性が高い傾向が確認された。また抗菌物質は変色部及び健全部共に、少なくとも3つ存在することが明らかとなった。現在、抗菌物質の分離を行い、ナラ菌に対する抗菌活性試験を進行中である。


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