| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-101 (Poster presentation)

ユーカリにおけるEcHB1遺伝子過剰発現が光合成能力や葉の形態に与える影響

*佐々木恵相(京都工繊大・応用生物), 半場祐子(京都工繊大・応用生物), 河津哲(王子製紙・森林研)

近年、環境問題に対し様々な対策が世界で講じられる中、注目されているものの一つに植物における遺伝子組換えが挙げられており、経済的影響や環境的影響の観点からも遺伝子組換えの重要性が示唆されている。HD-ZIPⅡタンパクの一種であるEcHB1は植物の成長促進や繊維長の延長など有用な影響を与えることが報告されているが成長に決定的な影響を与える光合成能力や葉の内部形態への影響に関するデータは得られていない。本研究ではEcHB1遺伝子を過剰発現させたユーカリの葉の形態や光合成能力などを評価すると同時に、EcHB1遺伝子による葉の内部構造の変化がどのように光合成に影響を与えているのかを明らかにすることを目的とした。

今回の実験では25℃の温室内でポット栽培した非形質転換ユーカリGUT5とEcHB1遺伝子過剰発現ユーカリHB系統を用いた。

EcHB1遺伝子過剰発現体の葉面積はGUT5より減少していたがSPAD値は増加していた。EcHB1遺伝子過剰発現体の最大光合成速度はGUT5より向上しており、最大カルボキシル化速度、電子伝達系、乾燥耐性においても向上している傾向が見られた。空隙率、葉肉細胞表面積、葉緑体表面積共にEcHB1遺伝子過剰発現体で増加していたが、細胞壁の厚さに変化はなかった。

HD-ZIP class Ⅱタンパクはオーキシンの分布や反応性を制御しており、このことから本研究においてユーカリの葉面積が減少したのはEcHB1がオーキシンに対する反応性を向上させためと考えられる。EcHB1遺伝子過剰発現体の最大光合成速度はGUT5と比べ大きく向上しており、葉の内部形態における空隙率、葉肉細胞の表面積、葉緑体表面積の増強が最大光合成速度を向上させた主要因であり、これらの増強もオーキシンが作用していると考えられる。


日本生態学会