| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-109 (Poster presentation)

ダイズの栽培化に伴う形質の変化:何を得て何を失ったのか?

*冨樫絢夏,及川真平(茨城大学理工学研究科)

植物の栽培化は、人間からみて有益な形質を選抜するように進められてきた。有益な形質とは、収量に貢献する生理機能や草姿、食味や栄養と関連する成分等である。本研究では、こうした形質の変化を調べ、またそれらとトレードオフ関係にある(すなわち栽培化に伴い劣化した)形質の検出を試みた。材料には、ダイズ(Glycine max)の新旧3品種と野生種のツルマメ(G.soja)を用いた。成熟葉の葉面積と乾燥重量、種子一粒重は、野生種に比べて栽培種で大きく、栽培種の中では新しい品種ほど大きかった。成熟葉の窒素濃度、LMA、厚さと最大光合成速度,寿命,そして生涯の光合成量は、野生種に比べ栽培種の方が大きかったが、栽培種の中では一貫した変化は見られなかった。成熟葉の葉面積と乾燥重量、成熟葉の葉面積または乾燥重量と種子一粒重、成熟葉の窒素濃度とLMAまたは厚さ、最大光合成速度または生涯の光合成量と葉寿命の間には正の相関があった。一方、葉柄の密度(葉柄の乾燥重量/[葉柄断面積×葉柄長])は、野生種に比べて栽培種で小さく、栽培種の中では新しい品種ほど小さかった。葉柄の密度と、葉面積または乾燥重量との間には負の相関が見られた。このことから、成熟葉の葉面積または葉重と葉柄の密度の間にはトレードオフ関係があることが示唆された。栽培化に伴う葉柄の密度の減少は、物理的なダメージ(強風や雹など)への耐性の低下や食害の増加を引き起こしているかもしれない。


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