| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-118 (Poster presentation)

小笠原諸島における送粉生態系撹乱が固有種シマザクラの繁殖成功と遺伝的特徴に与える影響―対照的な2島の比較解析―

*津田 優一 (京大院・農), 加藤英寿(首都大・牧野標本館), 井鷺裕司(京大院・農)

小笠原諸島の父島では侵略的外来種のグリーンアノールの捕食による在来の訪花昆虫相の衰退と野生化したセイヨウミツバチの優占によって送粉生態系で撹乱が生じている。この撹乱による小笠原固有植物の繁殖成功と遺伝的特徴への影響は明らかになっていない。そこで本研究では小笠原固有種のシマザクラを対象に撹乱の有無で対照的な聟島と父島において、 1) 訪花昆虫相、2) 結果率、3) 遺伝的多様性と自殖率を比較解析し、送粉生態系撹乱の影響を明らかにすることを目的とした。

両島でシマザクラ1花序を対象に2分間隔のインターバル撮影を24時間5セットずつ行った。また、聟島で23花序、父島で25花序の結果率の測定を行った。新たに開発したマイクロサテライトマーカー14座で聟島の成木41個体、父島の成木31個体のヘテロ接合度期待値(He)、アレリックリッチネス(Rs)、近交係数(FIS)の算出を行い、さらに親子解析で親を有意に同定できた種子(聟島: 53個、父島: 71個)のヘテロ接合度期待値(He)、アレリックリッチネス(Rs)、自殖率、送粉距離を算出した。

訪花昆虫撮影の結果、撹乱が生じている父島では、聟島に比べて総訪花頻度と在来昆虫の訪花が少なく、外来種のセイヨウミツバチが総訪花頻度の59%を占めており、シマザクラにおいても送粉生態系が撹乱されている事が明らかになった。結果率は父島で有意に低いことが明らかになった(p < 0.05)。しかし、成木と種子の遺伝的多様性、自殖率に島間で有意差はなく、訪花昆虫相の変化は本種の遺伝的特徴に影響を与えていない事が示唆された。また、父島では長距離の送粉が多く確認され、外来種のセイヨウミツバチと在来種のオガサワラクマバチが長距離の送粉を担っていると考えられる。


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