| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-137 (Poster presentation)

森林帯‐高山帯エコトーンにおける訪花昆虫群集の季節動態と開花フェノロジー構造との関連性

*水永優紀(北大・環境科学), 工藤岳(北大・地球環境)

山岳生態系の森林帯−高山帯エコトーンでは、植物群集の種組成や開花時期が標高や季節変化とともに大きく変化する。開花構造(群集レベルのフェノロジーと花資源量)の時空間変動は、訪花昆虫群集の組成や季節性に影響すると予測される。山岳生態系において、ハチ類とハエ類は主要な訪花昆虫であるが、その訪花習性は異なる。一般にハエ類はハチ類に比べて定花性が低く、特定種の花に固執しない訪花傾向があるとされている。しかし、山岳生態系における開花構造の変動に対して、ハエ類とハチ類がどのように訪花植物を選択しているかの観察例はわずかである。さらに、実際の訪花習性は、ハエ類・ハチ類それぞれの機能的な分類群間でも異なるかもしれない。本研究では、森林帯−高山帯エコトーンにおける訪花昆虫群集の季節動態と植物群集の開花構造の関連性の解明を目的とした。

北海道大雪山旭岳の標高1100−1600mの登山道約3.4 kmにおいて、訪花昆虫と訪花植物を毎週記録した。ハチ類はマルハナバチ類と単独性ハチ類の2機能型に、ハエ類はハナアブ類とその他のハエ類(大・中・小)の4機能型に分類した。さらに、等間隔に設置したプロットの開花植物種と開花数を毎週記録し、開花構造の季節動態を定量化した。

植物群集内の開花種数は低標高森林帯で高かったのに対し、開花量は高山帯で大きかった。マルハナバチ、ハナアブ、ハエ(大)は湿原や高山で出現頻度が高かった。ハエ(中・小)はシーズン初期に頻度が高かったのに対し、それ以外の昆虫は中期に出現頻度が高かった。訪花昆虫が利用する植物の類似度はハチ類とハエ類で大きく異なり、さらに、同じタイプ内の機能型間でも異なっていた。この結果は、ハエ類においても機能型間で訪花習性が異なることを示している。


日本生態学会