| 要旨トップ | 目次 | 日本生態学会第63回全国大会 (2016年3月、仙台) 講演要旨
ESJ63 Abstract


一般講演(ポスター発表) P1-139 (Poster presentation)

熱帯低地林における実生更新に野生ブタ撹乱が及ぼす影響

*玉置祐芸(京大・農),飯田佳子(京大・農),佐々木瞭太(京大・農),Luskin. M(UC berkeley),Fletcher. C(FRIM),北島薫(京大・農)

野生ブタによる営巣活動や掘り返しなどの撹乱は、森林の植物の更新動態に影響を及ぼす。営巣活動では特定樹種の若木を好んで折り取ることが報告されており、掘り返しは実生生存に影響を与えると予測される。よって、野生ブタの個体群密度増加は森林構成種の特に早い生育段階の成長や生存に影響を与え、種組成の変化や種多様性喪失を引き起こす可能性がある。半島マレーシアのパソ森林保護区では、野生ブタの密度が近年急増している。パソ森林保護区において野生ブタ撹乱が若木に影響を与えているとの報告はあるが、より若い段階の実生にどのような影響を及ぼすのかは明らかになっていない。よって、本研究では、野生ブタによる実生更新への影響を定量的に把握するために、保護区に設置された野生ブタ排除柵内と柵外に実生調査区を設置し、実生の成長率と死亡率を調べた。野生ブタ排除柵は、1997年に設置され、2014年には補修が行われた。柵内には5m四方の樹木調査区が設置されている。2015年8月に柵内外に1m四方の実生調査区を設置し、調査区内の高さ30cm以下の全ての実生にタグを付け、高さを測定した。また調査区毎に光環境を測定した。5ヵ月後に追跡調査を行い、死亡率、成長率を算出した。結果、柵外での実生成長率、死亡率、積算光量子は柵内よりも有意に高かったが、高さ30cm以上の若木の密度、サイズは柵内よりも有意に低かった。従って、野生ブタ撹乱は実生、若木密度を減少させるが、その一方で実生の成長を促進する明るい光環境をもたらしている可能性が示唆された。


日本生態学会